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物損について

請求権者

交通事故による車両の毀損は、車両の所有権に対する侵害であるので、原則として被害車両の所有者が損害賠償の請求権者となります。被害車両の所有権については、被害車両の車検証や車両の売買契約書などによって立証します。

被害車両について修理費を支出するケースでは、車両の利用権や占有権に対する侵害という側面があるので、車両の利用者が修理費を請求することができます。損害の請求権者としてはどのような権利が侵害されたのか明らかにする必要があります。

自動車が所有権留保付きで売買された場合は、売主に所有権が留保されているので、買主(用者)修理費や代車使用料などの使用利益に関する損害を請求することができますが、評価損等の車両自体に関する損害の請求権者は所有権を留保している売主ということになります。

修理費と買換差額

事故車両が修理可能なときは、適正な修理費相当額を損害として請求できます。修理費はその領収書、見積書、請求書等により立証します。修理が未了であり現に修理費を支出していなくとも、損傷を受けている以上損害は発生しているといえるから、見積書等の証拠に基づき修理費を請求することは可能です

修理費として認められるのは、事故と相当因果関係のある修理についてです。したがって、事故による損傷の範囲を超える修理や、過去の事故による損傷部分の修理等の費用は認められません。修理の必要性および修理内容と事故との因果関係を確認できるように、修理内容が記載された修理明細書や被害車両の損傷部分とその修理状況がわかる写真を用意しておくとよいです。

物理的全損や経済的全損(理費が被害車両の時価額を上回る場合)車体の本質的構造部分(とえばフレーム)に重大な損傷がある場合は、修理費ではなく、買替差額(替費用)損害となります。この場合、賠償額として認められるのは、新車の購入費用ではなく、被害車両の事故時における市場価格と被害車両の売(クラップ)金との差額です。したがって、被害車両が物理的に修理可能かどうか、また、車体の本質的構造部分に重大な損傷があるか否かについて調査するとともに、修理費用と被害車両の時価額のいずれが高額であるのかを把握する必要があります。

被害車両の市場価格は、

  • オートガイド社発行の「オートガイド自動車価格月報」(ッドブック)
  • 財団法人日本自動車査定協会の「中古車価格ガイドブック」(エローブッ)
  • 全国技術アジヤスター協会の「建設車両・特殊車両標準価格表」
  • 中古車情報誌やインターネット上の中古車情報

 

等で被害車両と同様・近似の車両を探すことによって調査します。

評価損

事故車となったことによる車両の売却時価格の低下は、いわゆる評価損として損害が認められる場合があります。評価損は修理費を基準として、その23程度が損害として認められる例がありますが、この場合、被害車両の修理の内容、程度、初年度登録からの期間、走行距離、車種などの考慮要素を主張立証する必要があります。

評価損の立証手段としては、財団法人日本自動車査定協会の事故減価額証明書も考えられますが、記載金額がそのまま損害として認められることはあまりなく、損害額算定に関する参考資料とされるにとどまっています。オリオン法律事務所では、基本的に日本自動車査定協会の証明書による交渉・立証は行わない方針です。

代車使用料

代車使用料は、被害車両の修理期間中や自動車買替期間中、相当な範囲で損害として認められます。立証手段としては、レンタカー使用料の領収書などが考えられます。被害者が代車となりうる車両を保有しており、これにより被害車両の代替となすことが可能な場合は、代車使用の必要性が否定されるので、被害者が代車となりうる車両を保有していないことを主張立証する必要があります。

営業車だけでなく、自家用車についても代車使用料が損害として認められる可能性はありますが、この場合、自家用車の利用が日常生活を営む上で必要不可欠であることや公共交通機関の利用が困難であること等を主張立証する必要があります。

代車使用料が認められる相当期間は、被害車両の修理の場合は12間程度が通常とされていますが、買替の場合には1か月程度認められる場合があります(阪地判平1368交通民集343738)
また、
被害車両の修理に着手する前の保険会社との交渉期間、修理に要する部品の調達期間、営業車両の登録期間も代車の必要期間に算入されうるので、これらの事情を適確に把握し、陳述書等により立証する必要があります。

休車損

タクシーやバス、 トラックなどの営業車が、交通事故による被害で営業に供せない場合には、そのことにより得べかりし利益を体車損として請求することができます。休車損は、被害車両から得られる1あたりの利益額から、支出を免れたガソリン代等の経費を控除し、これに休車日数(当な修理期間または買替期間)かけて算出します。被害者が遊体車を保有しており、これを被害車両の代替とすることができる場合には、休車損は認められません。

したがって、当該被害車両のあげていた利益額や経費を裏付ける資料(定申告書や帳簿など)準備するとともに、遊休車が存在しないことを主張立証する必要があります。

その他雑費

上記以外の物損に関する損害としては、被害車両の牽引費用、保管料、廃車料、帰宅交通費(事故現場から自宅等へ帰宅するための交通費)、修理の際の見積料、事故減価額証明書、買替の場合の車庫証明費用などがあります。基本的にはこれらを支出したことを証する領収書やレシート等が立証手段となりますが、支出の必要性や相当性についても確認の上で主張立証する必要があります。

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