運転の補助とは、運転者の支配下にあって運転に参与し、運転行為の一部を分担することをいい、助手、車掌、クレーン車の玉掛け等がこれに当たるといわれています。
運転の補助に「従事する」とは、運転に従事する場合と同様、事実上の概念です。

「他人」から除外される運転補助者の定義は、条文上明らかとはいえず、どのような場合に運転補助者として他人性を否定されることとなるのか、実務上争いとなることも多いです。

事実上運転の補助に従事していれば足りるという説もありますが、学説は、

• 「他人」として保護されない運転補助者の範囲を限定すべく、運転補助行為に業務性・義務性を要求したり、
• 運転補助者に事故発生について過失があること(運転補助者の過失と事故発生との間に相当因果関係があること)が必要であるとしたり、
• 「運転」に直接関与し運転者と同視できる程度の有責的行為を行っていたと評価できる者に限定すべきとする

など、様々な説が提唱されています。

最高裁平成11年7月16日判決判時1687‐81は、事例判決ではありますが、

• 鋼管杭の運搬を請け負った会社の従業員(被害者)が、鋼管杭をトラックで運搬したあと、杭打ち工事を請け負った他社従業員(玉掛の技能・資格を有する)がクレーン車で荷降ろしをする際に、好意から作業を手伝い、吊り下げられた鋼管杭の下に立ち入ったところ、玉掛作業を行つた他社従業員のミスで鋼管杭が地上に落ち被害者が死亡したという事案で、
• 被害者は、「荷降ろし作業について指示や監視をすべき立場になかったことはもちろん、右作業を手伝う義務を負う立場にもなかった」とし、また、鋼管杭が落下した原因は、不適切な短いワイヤーロープを使用した上、本件クレーンの補巻フックにシャックルを付けずにワイヤーロープを装着したことにあるところ、これらはすべて他社従業員が自らの判断により行ったものであって、被害者は、ワイヤーロープ装着後に好意から玉掛作業を手伝つたにすぎず、「被害者の右作業が鋼管くい落下の原因となっているものではない」として、
• 被害者は本件クレーン車の運転補助者には該当せず、他人に含まれるとしました。

この最高裁の判決を受けて、実務上は、

1. 被害者が現に運転補助業務を行っており、当該作業について運転者と共同一体性があること、
2. 運転補助行為が義務的であること(業務性のあること)、
3. 運転補助行為に過失があり、かつその行為と事故発生との間に因果関係があること、

という要件を満たした場合にはじめて運転補助者と解すべきという扱いも有力になっています。

また、以上のような、運転補助者概念を限定的に解釈する説に対しては、「運転補助者」概念を狭めるのではなく、運転補助者というだけで「他人性」を否定するのではなく、他人性が否定される場合を限定的に解釈してゆくべきであるという説も提唱されています。