自賠法2条2項は、「運行」について、「人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう」としています。
「当該装置の用い方に従い用いること」については、もともと自賠法制定時においては、自動車を使用する者の主観的意思が加わった動作をさし、停車している状態や無人自動車の暴走等は運行ではないと考えられていたようですが、その後、交通事故の増加と被害の深刻化に伴い、学説および実務は、駐停車中や荷降ろし作業中の事故なども「運行」に含めるなど、運行概念を拡張してきました。
すなわち、もともとは、「運行」とは原動機の作用により自動車を移動せしめることをいうとする「原動機説」的な考え方がとられていたが、その後、自賠法2条2項の「当該装置」には、原動機だけでなく、自動車の構造上設備されているハンドル、ブレーキ、機関その他の走行に関連する装置(走行装置)を含み、運行とは走行装置をその本来の使用方法に従って操作することをいうとする「走行装置説」を経て、現在の判例は「固有装置説」にたっているといわれています。
「固有装置説」とは、「当該装置」は走行装置に限らず、燃料、冷却、潤滑、排気その他、当該自動車に固有の装置の全部または一部をいい、「用いる」とは、固有の装置の全部または一部をその目的に従って使用することをいうとする考え方です。
固有装置説によると、当該装置には、自動車の構造上設備されている装置のほか、クレーン車のクレーン、ダンプカーのダンプ、普通貨物自動車の側板や後板なども含まれることとなります。
これに対し、学説は諸説あります。
以上のような様々な学説があるものの、現在の実務は、基本的に固有装置説にたった上で、「固有装置を用いる(運行)」に当たるか、さらには次に述べる運行「によって」生じた事故か否か、という2つの観点から、当該自動車の運行に起因する事故か否かを判断しているといえる。
運行「によつて」に関しても、学説は、事実的因果関係説、相当因果関係説、さらに運行に際して説などがあるが、判例は、相当因果関係説にたっています(後掲最判昭43。10・8、最判昭52・11・24等)。
事実的因果関係説は、運行と事故との間に、事実的因果関係があれば足りるとするもの、相当因果関係説は、運行と生命。身体の侵害との間に相当因果関係が必要であるとするものです。
これに対し、運行に際して説は、より広く、事故が運行に際して生じればよい(事故と運行との間に時間的。場所的接着関係があればよい)とするものです。
これらの判決からは、「運行によって」といえるか否かの判断は、何を「固有装置」と認めるかによって結論が異なってくる可能性がある上に、「によって」の判断も「相当因果関係」の有無の判断であることから、判断者によって評価が分かれる場合も少なくないことがわかります。
その後の裁判例をみてゆくと、固有装置といえるかどうかが問題となったものとして以下のような事例があります。
駐停車車両による事故には、
などのパターンがあります。
前述のように、以前は、車両の駐停車状態が「運行」といえるか否かが問題となっていましたが、現在の実務では、道路上での駐停車状態自体も「運行」であるとしたり、あるいは、前後の走行との連続性から「運行」を肯定するなどして、そもそも駐停車自体が「運行」とはいえないとして運行起因性を否定する裁判例はほとんどありません。
現在の実務では、事故が運行「によって」生じたものであるか、すなわち、駐停車行為と事故との間に相当因果関係があるかが問題になる場合が多いです。
道路上であっても、駐車可能なスペースに適法に自動車を駐車していた場合には、運行起因性は基本的に否定されることが多いですが、駐停車禁止場所に違法に駐車していた場合には、運行起因性が認められる場合も少なくありません。
最近の過失相殺基準は、駐停車車両への追突事故の過失相殺率についても基準化し、基本的には追突した車両に100パーセントの過失があるとしつつ、違法駐車等の場合を修正要素として、駐車車両の責任を肯定しうる場合があるとしています。
最近の裁判例で運行起因性が否定されたものは、以下のとおりです。
これに対し、肯定例も多数あります。
非接触事故については、最高裁昭和47年5月30日判決(民集26-4‐989)が、
としました。
最近の実務では、車両の責任を否定して、被害者の自損事故と判断する例もありますが、加害車両の運行が「常軌を逸した」とまではいえなくとも、非接触の一事をもって車両の運行と被害者の受傷との間の相当因果関係を否定することはできないとして、事案に応じ、車両の責任を肯定する場合も十分にありえます。
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