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運行起因性

「運行」について

自賠法22は、「運行」について、「人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう」としています。

「当該装置の用い方に従い用いること」については、もともと自賠法制定時においては、自動車を使用する者の主観的意思が加わった動作をさし、停車している状態や無人自動車の暴走等は運行ではないと考えられていたようですがその後、交通事故の増加と被害の深刻化に伴い、学説および実務は、駐停車中や荷降ろし作業中の事故なども「運行」に含めるなど、運行概念を拡張してきました。

すなわち、もともとは、「運行」とは原動機の作用により自動車を移動せしめることをいうとする「原動機説」的な考え方がとられていたが、その後、自賠法22の「当該装置」には、原動機だけでなく、自動車の構造上設備されているハンドル、ブレーキ、機関その他の走行に関連する装置(走行装置)を含み、運行とは走行装置をその本来の使用方法に従って操作することをいうとする「走行装置説」を経て、現在の判例は「固有装置説」にたっているといわれています。

「固有装置説」とは、「当該装置」は走行装置に限らず、燃料、冷却、潤滑、排気その他、当該自動車に固有の装置の全部または一部をいい、「用いる」とは、固有の装置の全部または一部をその目的に従って使用することをいうとする考え方です。

固有装置説によると、当該装置には、自動車の構造上設備されている装置のほか、クレーン車のクレーン、ダンプカーのダンプ、普通貨物自動車の側板や後板なども含まれることとなります。

これに対し、学説は諸説あります。

  • 「車庫から車庫入り説(車自体説)」は、「当該装置」とは車自体をさし、車の場所的移動や装置の操作に限らず、車庫を出てから車庫に格納されるまでの途中の駐車、停車の場合も「運行」に含まれるとします。
  • そのほか、法文(「当該装置」)の形式的解釈によらず、運行概念を実質的にとらえようとする方向で次のような学説が提唱されています。「危険性説」は、自動車の通常の走行の場合に匹敵するような危険性をもつ状態におく行為を運行というと解する説です。
  • 「物的危険性説」は、運行とは、その自動車の装置といえるもの(積荷、乗員は装置ではない)をその用い方に従って用いる場合の物的危険状態を意味するとする説です。
  • 「自動車機能使用説」は、運行とは、自動車を用途目的に従って使用する状態であるとする。
  • さらには、危険を類型化し、運行を時間的可変的概念ととらえた上で、自動車の危険を、走行関連危険類型、交通関与危険類型、積載物危険類型、効用促進危険類型、大気汚染危険類型などに分け、自賠法が適用される危険類型は、自賠責保険ファンドがその発生を予見でき、発生可能な同種危険と類型化できるものに限定すべきとする説もあるようです。

以上のような様々な学説があるものの、現在の実務は、基本的に固有装置説にたった上で、「固有装置を用いる(運行)」に当たるか、さらには次に述べる運行「によって」生じた事故か否か、という2つの観点から、当該自動車の運行に起因する事故か否かを判断しているといえる。

「によって」について

運行「によつて」に関しても、学説は、事実的因果関係説、相当因果関係説、さらに運行に際して説などがあるが、判例は、相当因果関係説にたっています(掲最判昭43108最判昭521124等)

事実的因果関係説は、運行と事故との間に、事実的因果関係があれば足りるとするもの、相当因果関係説は、運行と生命。身体の侵害との間に相当因果関係が必要であるとするものです。

これに対し、運行に際して説は、より広く、事故が運行に際して生じればよ(故と運行との間に時間的。場所的接着関係があればよい)するものです。

裁判例

  • 最判昭43・10・8民集22-10-2125(走行装置説の採用〕
    エンジン故障のため、ロープで他の自動車に牽引されている貨物自動車の荷台から8歳の児童が飛び降りて死亡した事故につき、他の自動車に牽引されている自動車であつても、当該自動車がハンドルやブレーキの操作により操縦の自由を有し、これらの装置を操縦しながら牽引されているときは、当該自動車の走行は「運行」に当たるとしました。
  • 最判昭52・11・24民集31-6-918〔固有装置説の採用〕
    道路脇の田んぼに転落した貨物自動車をクレーン車によって引上げ作業中、上空に架設されていた高圧電線にクレーンのワイヤーが接触し、作業をしていた者が感電死したという事故につき、「運行」には、特殊自動車であるクレーン車を走行停止の状態に置き、操縦者において固有の装置であるクレーンをその目的に従って操作する場合をも含むとしました。
  • 最判昭63・6・16判時1298-113〔荷降ろし中の事故(運行起因性肯定〉
    フォークリフト挿入用の枕木が設置されている貨物自動車の荷台から、材木を荷降ろし作業中、貨物自動車の荷台にあった木材をフォークリフトを用いて荷台の反対側に突き落としたところ、たまたま通りかかつた子どもに木材が当たり子どもが死亡したという事故につき、貨物自動車の「運行によって」生じた事故か否かが問題となりました。判決は、「枕木が装置されている荷台」は、当該貨物自動車の固有の装置であり、作業が、「荷台をその目的に従つて使用することによって行われたもの」であることから、事故が当該貨物自動車を当該装置の用い方に従い用いることによって生じたものとしました。
  • 最判昭63・6・16民集425-414〔荷降ろし中の事故(運行起因性否定)〕
    大型貨物自動車から、フォークリフトで材木を荷降ろしして、道路を隔てた敷地に運ぶ作業をしていた際に、通りかかった軽自動車がフォークリフトのフォーク部分に衝突した事故につき、事故が貨物自動車の「運行」によって生じたものか否かが問題となりました。判決は、本件自動車がフォークリフトによる荷降ろし作業のための枕木を荷台に装着した木材運搬用の貨物自動車であり、荷降ろし作業終了後直ちに出発する予定で一般車両の通行する道路に本件車両を駐車させ、フォークリフトの運転者と共同して荷降ろし作業を始めたものであり、本件事故発生当時、本件フォークリフトが3回目の荷降ろしのため本件車両に向かう途中であったなどの事情があっても、本件事故は貨物自動車を当該装置の用い方に従い用いることによって発生したものとはいえないとしまし。
    上記の判決は、枕木を装着した荷台を固有装置であるとして、これを使用した荷降ろし作業中の事故につき、荷降ろし作業自体を「運行」と認め、運行起因性を肯定したものです。また、この判決は、当該装置を「用いる」といえる場合につき、装置を「操作」する場合に限らず、「使用」する場合も含むものとし、「運行によって」といえる範囲をより広げたものとの評価もなされています。

これらの判決からは、「運行によって」といえるか否かの判断は、何を「固有装置」と認めるかによって結論が異なってくる可能性がある上に、「によって」の判断も「相当因果関係」の有無の判断であることから、判断者によって評価が分かれる場合も少なくないことがわかります。

その後の裁判例をみてゆくと、固有装置といえるかどうかが問題となったものとして以下のような事例があります。

  • 最判平7・9・28交通民集28-5-1255
    大型貨物車のアウトリガーを操作して、荷台からパワーショベルを下ろす作業中、荷台からパワーショベルが転落した事故につき、運行起因性を肯定しました。
  • 最判平8・12・19交通民集29-6-1615
    自損事故保険における「運行」が問題となった事案でしたが、予備バッテリーを持ち込みバッテリーの能力を回復させるための修理補修中、予備バッテリーが爆発した事故で、予備バッテリーは車両の「当該装置」とはいえず、また、事故の原因は、被害者が予備バッテリーとリード線の接続部分の操作を誤つたことによるものであるから、事故と運行との間には相当因果関係は存じないとし、運行起因性を否定した原審の判断を是認しました。
  • 甲府地判平3・1・22判夕754-195
    自動車の荷台上で荷降ろし作業中、積み荷をハンドリフトに載せて荷台後部まで移動させてきたところ、幌付き荷台後部のシートに積み荷の上部を接触させてこれを前方に転倒させ、作業を手伝つていた作業員を積み荷の下敷きにして死亡させた事故につき、幌付きの荷台は自動車の固有装置であり本件荷降ろし作業は、同幌付きの荷台をその目的に従って使用することによって行われたものというべきであるとして、運行起囚性を認めました。

実務上の問題(駐停車中)

駐停車車両による事故には、

  1. 駐車車両に後続の車両(二輪車、自転車、四輪車等)が追突する場合
  2. 駐車車両との衝突を回避しようとして他車と衝突する場合
  3. 他車との衝突後、駐停車車両に衝突する場合

などのパターンがあります

前述のように、以前は、車両の駐停車状態が「運行」といえるか否かが問題となっていましたが、現在の実務では、道路上での駐停車状態自体も「運行」であるとしたり、あるいは、前後の走行との連続性から「運行」を肯定するなどして、そもそも駐停車自体が「運行」とはいえないとして運行起因性を否定する裁判例はほとんどありません。

現在の実務では、事故が運行「によって」生じたものであるか、すなわち、駐停車行為と事故との間に相当因果関係があるかが問題になる場合が多いです。

道路上であっても、駐車可能なスペースに適法に自動車を駐車していた場合には、運行起因性は基本的に否定されることが多いですが、駐停車禁止場所に違法に駐車していた場合には、運行起因性が認められる場合も少なくありません。

最近の過失相殺基準は、駐停車車両への追突事故の過失相殺率についても基準化し、基本的には追突した車両に100パーセントの過失があるとしつつ、違法駐車等の場合を修正要素として、駐車車両の責任を肯定しうる場合があるとしています。

最近の裁判例で運行起因性が否定されたものは、以下のとおりです。

  • 東京地判平18・5・16交通民集39-3-647
    駐車が禁止された片側3車線道路の第一車線に駐車していた車両に、二輪車が衝突し、その後第二車線走行中のバスに衝突した事故につき、午前6時40分の事故ですでに明るくなっており視認不良とはいえないこと、直線道路であり見通しがよかったこと、駐車車両はハザードランプを点滅させていたこと、第一車線にはまだ通行可能なスペースがあったこと等から、事故はもっぱら被害者の前方不注視によって生じたもので、事故と駐車行為との間に相当因果関係はないとしました。
  • 大阪地判平9・12・18交通民集30-6-1793
    パトカーに追跡され逃走中の二輪車が駐車車両に衝突した事故で、事故は被害車両(二輪車)運転者の一方的な過失によって発生したもので、駐車と事故の発生との間には相当因果関係がないとして、運行起因性を否定しました。

これに対し、肯定例も多数あります。

  • 東京高判平20・11・20自保ジャ1764-2
    直線道路に駐車していた加害車両に、被害車両(二輪車)が追突した事故につき、基本的には被害車両運転者の前方不注意による事故と認められるが、加害車両にも、駐車禁止場所である交差点内に駐車した過失、車両を駐車するにあたリハザードランプ等の灯火を点灯しなかった過失、被害者の進行する道路の片側大半をふさぐ状態にした過失、他の駐車禁止でない場所に駐車できたにもかかわらずあえて駐車禁止である交差点内に駐車した過失が認められるとして駐車車両の責任を認め、被害者につき7割の過失相殺をしました。
  • 東京地判平14・6・24自保ジヤ1461-2
    駐車車両に二輪車が衝突した事故につき、夜明け前で降雨があり、街路樹等により駐車車両の視認が容易でない状態で、非常点滅燈も三角反射板の設置もせずに、駐車禁止場所に駐車した加害車両の責任を認め、被害者につき6割の過失相殺を行いました。

実務上の問題(非接触事故)

非接触事故については、最高裁昭和47年5月30日判決(民集26-4‐989)が、

  • 歩行者が二輪車の突進に驚いて転倒し負傷した事故で、車両と被害者の接触がないときであっても、車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したものであつて、歩行者がこれによって危険を避けるべき方法を見失い転倒して受傷するなど、衝突にも比すべき事態によって傷害が生じた場合は、運行と受傷との間に相当因果関係を認めるのが相当である

としました。

最近の実務では、車両の責任を否定して、被害者の自損事故と判断する例もありますが、加害車両の運行が「常軌を逸した」とまではいえなくとも、非接触の一事をもって車両の運行と被害者の受傷との間の相当因果関係を否定することはできないとして、事案に応じ、車両の責任を肯定する場合も十分にありえます。

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