自賠法16条に基づく被害者の保険会社に対する直接請求権は、加害者が被害者に対し損害賠償義務を負っているものの、加害者に支払う意思や支払能力がないために、被害者が損害賠償を受けられない事態が生じることがないようにするために、被害者が直接、保険会社に損害の填補を求めることを認めた制度です。
このような被害者保護の趣旨を徹底させる目的から、自賠法18条で直接請求権の差押えが禁止されており、被害者が破産した場合においても、直接請求権は破産財団を構成せず自由財産となり、被害者は直接請求権を行使することによつて損害の賠償を受けることができるとされています。
したがって、これが破産財団を構成することはなく(破産法34条3項2号)、自由財産となるから、被害者たる破産者が自由に管理処分することができます。
一方、被害者の加害者に対する損害賠償請求権は破産財団に帰属します。そこで、被害者の加害者に対する損害賠償請求権と、自賠法上の直接請求権の関係が問題となりますが、両請求権の行使につき法が定めた優劣関係は存在しないため、先に弁済を受けたほうが優先するという関係になります。
もっとも、被害者の有する損害賠償請求権を破産管財人が積極的に行使して債権者の満足にあてることは問題があります。被害者の破産申立代理人としては、破産管財人に対して損害賠償請求権の行使をしないよう求めるか、自由財産の範囲の拡張(同条4項)の制度を利用するなどの対応をとる必要があります。
直接請求権行使の結果、あるいは加害者が損害賠償義務を履行した結果、振込送金された預金債権は、依然として破産者の自由財産かという問題があります。
すなわち、破産法34条3項2号但書によれば、破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは破産財団に属することになるところ、預金債権自体は差押禁止債権とはされていないから、破産財団に属することになります。
しかし、そのように考えると、被害者救済のために直接請求権の差押えを禁止した自賠法18条の趣旨はまったく失われることになってしまいます。
被害者の損害を填補するための賠償金は、預金債権に転化した以降も依然として差押えは禁止されたままであり、破産法34条3項2号但書には該当せず、破産者の自由財産であると解すべきであると考えます。
少なくとも、後遺症慰謝料、将来の治療費・介護費用、逸失利益などは、将来の損害についての賠償金の前払いという側面があり、自由財産に含めるべきと思われるところで、交通事故被害者の受領した賠償金もしくは保険金を自由財産とするにしても、何らの手続も経ないで当然にそのように扱いうるかは微妙です。
そこで、自由財産の範囲の拡張を申し立てる必要があります。破産法34条4項は、裁判所は、破産者の生活の状況や自由財産の種類および額破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して自由財産の範囲を拡張することができると定めています。
自由財産の制度は、元来、破産手続に伴う破産者の一時的な経済生活の困窮から破産者を救済する制度ですが、損害賠償請求権は、将来の逸失利益や将来発生すべき費用を現在生じている損害であると擬制して認められているのですから、この点を自由財産の範囲の拡張にあたっては考慮すべきです。
すなわち、理論的には、損害賠償請求権のうち、将来の逸失利益や将来発生すべき費用に相当する部分は破産手続開始後に具体的に発生するものとして、新得財産であって破産財団を構成しないという法律構成もありえます。(もそも自由財産として評価すべきもの)
したがって、自由財産の範囲の拡張が、即、破産債権者への配当原資である破産財団の減少であつて、破産債権者の利益が害されるという関係にはならないと考えることもできるでしょう。
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