下請・孫請業者による事故について、元請業者に運行供用者責任が認められる場合もあります。
元請業者と下請業者の関係は、原則的には独立した当事者同士の契約関係であり、下請は自己の仕事として請負業務に従事しているのであって、下請が業務中に自動車で事故を起こした場合にも、基本的には元請業者には運行供用者責任は生じません。
しかし、元請と下請との間に一定の支配従属関係が存したり、元請の指揮監督下にあるなど、元請・下請の関係によっては雇用関係に近い関係と評価できる場合もあり、このような場合には、下請業者の起こした事故について元請業者に運行供用者責任が認められる場合があります。
最高裁昭和46年12月7日判決判時657‐ 46は、元請人が下請人から自動車と運転手の派遣を受け、運転手らに宿舎を提供し、元請人の指揮監督の下、元請人の従業員と一緒に作業を実施させていたことなどから、運行は元請人の支配の下に元請人のためになされたものとして、元請人の運行供用者責任を認めました。
下級審でも、東京地裁平成元年4月7日判決(交通民集22‐2-459)などが元請人の運行供用者責任を認めています。
これに対し、最高裁昭和46年12月7日判決判時657-50は、元請人が車検上の「使用者」でかつ自賠責保険の保険契約者でもあつた事案ですが、自動車を下請人に譲り渡した後であり、所有者である下請会社との間に専属的関係が認められず、企業間に出資・役員派遣・営業財産の貸与。自動車保管場所の提供等の事実はなく緊密な一体性があるともいえないこと、元請会社の関者が現場で指揮監督にあたったこともないこと等から、元請人の運行供用者責任を否定しました。
単に元請・下請関係にあるというだけでなく、支配関係や一体性等の事情も考慮されているのです。
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